酵母の説明

 このページでは、「パネトーネマザー粉末(製パン用)」についての説明を行っています。
 「パネトーネマザー粉末(製パン用)」の特徴をわかりやすく説明するために、少し文章が長くて遠回り
 な説明になっていますが、よろしかったら最後までお付き合いください。

1.天然酵母とイースト  2.「昔のパンは美味しかった。」  3.自家製酵母はオンリーワン
4.パネトーネ酵母について  5.「パネトーネマザー粉末(製パン用)」とは  6.取り扱い上の注意点

パネトーネマザー粉末(製パン用)


1.天然酵母とイースト

 「天然酵母とイースト…どう違うの?」こんな疑問をお持ちになっている方もいらっしゃると思います。

 「イースト」と言うと、市販の「生イースト」や「ドライイースト」をまっさきに思い浮かべる方が多いと思
 うのですが、天然酵母は英語で言うと「ナチュラル・イースト」…つまり、大雑把な言い方をすると、
 天然酵母もドライイーストや生イーストも、全部「イースト(酵母)」なのです。

 では、「天然酵母」と「生イースト・ドライイースト」では何が違うのでしょう?

 「生イースト・ドライイースト」は、自然界に存在する酵母菌の中から特に発酵力の強い菌を選んで
 抽出し、衛生的な環境で雑菌が混入しない様に、栄養価の高い糖蜜等を使って効率よく培養して
 いるものです。
 一般的に「生イースト・ドライイースト」と呼ばれているものには、主に「サッカロミセス・セレビシエ」
 という菌が使用されています。
 地上にある酵母菌が無数にある事を考えると、発酵力の強い菌を純粋培養しているという事は
 「酵母界のエリート中のエリートを英才教育で育てている。」というような感じになります。
 最終的に、培養中に発生した発酵生成物などが取り除かれて、より純度が高く使いやすいものに
 して製品化されています。
 安定した強い発酵力で、数時間でパンを焼く事が出来る手軽な酵母です。

 安定したパンの製造を可能にする生イーストやドライイーストが作られる事がなければ、もともと
 パン食の習慣がなかった日本にこれだけパンが普及することはなかったかもしれません。

 一方、一般的に「天然酵母」と呼ばれているものは、昔からのやり方で、穀物や果物についている
 酵母菌や空気中の菌を、穀物や果物で培養して育てていくものです。
 イーストのように特に発酵力の強い菌を選んで培養したりするわけではないので、その発酵力は
 穀物や果物にどんな酵母菌がついていたか、培養した時に周辺にどんな菌が浮遊していたかに
 左右されます。
 通常、あまり強い発酵力は望めませんから、市販のものであっても自家製であっても長時間発酵さ
 せる事になります。

※もともとイースト菌も自然界の菌なので、「天然酵母の定義」は捉え方によって若干違うようです。
ここでは、もっとも一般的と思われる解釈で説明させていただいています。

 天然酵母は、「酵母のエリート」である「生イースト・ドライイースト」よりも、扱うのはずっと大変…
 では、天然酵母の魅力とは一体なんでしょう?

2.「昔のパンは美味しかった。」

 少しお年を召した方の中には「昔のパンは美味しかった。」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
 なぜ、昔のパンは美味しかったのでしょう?

 昔のイースト工場は、現在ほど培養技術が発達していませんでした。そのため、培養過程でイース
 ト菌以外の菌も混ざってしまっていたそうです。また、発酵中に発生する発酵生成物(酵素など)も、
 現在の製品のように取り除くことは出来なかったそうです。

 それらの「イースト菌以外の菌や発酵生成物」はパンの旨みを引き出す役割をしていたのですが、
 イースト菌以外の成分が含まれた酵母は発酵が安定しないため、パンを製造するベーカリーにとっ
 ては扱いづらい酵母だったそうです。

 そこで、ベーカリーから「お客様に安定してパンを提供するために、もっと安定して発酵するイースト
 が欲しい。」と言うリクエストを受けたイーストメーカーは、技術を向上させて徐々に改良し、現在の
 様に「(発酵を安定させるために)イースト菌以外の菌がほとんど入らない。」という製品に改良して
 いったそうです。

 「昔のパンは美味しかった。」というのは、当事の酵母は「天然酵母」に近い存在で、技術が進んだ
 現代よりも酵母に「パンの旨みを引き出す成分」がたくさん含まれていたせいかもしれません。

 もちろん、現在の生イーストやドライイーストで、美味しいパンができないわけではありません。
 風味の良い材料を組み合わせたりすれば、美味しいパンを焼く事は可能です。
 でも、「長時間発酵によって生まれる旨みや風味」は、やはり時間をかけなければ得る事が出来な
 いでしょう。

 有名店のパン屋さんが集まって書いたパンの本を見ると、生イーストやドライイーストを使っていて
 も「中種法」や「パン種法(発酵させたパン生地を冷蔵保存して翌日のパンに混ぜ込む)」などの方
 法で、わざと発酵に長時間かけるパンが多く紹介されています。また、大手メーカーのパンでも、
 「熟成」などの言葉が含まれる長時間発酵のパンが発売されています。
 生イーストやドライイーストを使っていても、発酵時間を長めにとる事で、短時間に発酵させた場合
 には引き出せない「発酵による旨み」を引き出していると思われます。

 「なぜ、天然酵母を使うと生イーストやドライイーストに比べて香りや旨みのあるパンが出来るの
 か?」…「天然酵母」には酵母菌以外のパンを美味しくする菌や、長時間種継ぎと発酵を繰り返す
 ことで生まれる「発酵生成物」など、「旨みの元」となる成分が豊富に含まれている事が大きな理由
 だといっても良いでしょう。

3.自家製酵母はオンリーワン

 現在、市販の天然酵母も販売されていますが、「1から天然酵母を作る。」となると、自家製酵母。
 …そんなわけで少し自家製酵母を例に挙げて話をする事にします

 こんな話を聞きました。パン教室の先生がイチゴ酵母に挑戦した所、大変うまくいって美味しいパン
 ができたそうです。そこで、教室の生徒さん達にも勧めたのですが、生徒さん達が作ってもあまり
 うまくいかなかったそうです。

 なぜこんなことが起きたのでしょう?

 もちろん断定は出来ませんが、考えられる原因の一つとして、「パン教室の先生の教室では、常に
 パンを焼いているために、空気中に多数のイースト菌が浮遊していた。」という事が挙げられます。
 イースト菌が多数浮遊している環境でイチゴの種を作ったため、イチゴの種の中にイースト菌が入り
 込み、良くふくらんで美味しいパンができたのではないか…という事です。

 この話で考えられる事…それは「天然酵母は、培養する環境(周囲にどんな菌が浮遊しているか)に
 よっても、まったく違う酵母が出来上がる。」という事です。

 これは、パンの酵母だけでなく他の発酵食品も同じような事が起きるようです。
 テレビで酒蔵の番組を見た事があるのですが、天井にはびっしりと麹菌がはりついていて、酒蔵の
 方は「天井に付着している菌を掃除してしまうと、お酒の味が変わってしまう。」とおっしゃっていま
 した。

 もちろん、もともと果物や穀物についている菌や培養の仕方でも「美味しいパンができる酵母にな
 るかどうか。」は大きく影響されますが、「どんな環境で培養するか。」も重要な事のようです。
 
 そういった意味で「自家製酵母」は「オンリーワン」。培養するのは難しいとは思いますが、「世界で
 一つだけの酵母」と思うと、パンが焼けたときの喜びは変えがたいものかもしれません。

4.「パネトーネ酵母」について

 パネトーネ酵母の生まれ故郷は、美しい自然に囲まれたアルプスの麓コモ湖周辺。
 その周辺(及びほぼ同じ環境の場所)で浮遊している菌を400年かけて種継ぎを繰り返して濃縮し、
 現在まで引き継いできたという歴史があるものです。

※パネトーネマザーの「マザー」は「酵母種」というような意味で、元々生種が「パネトーネマザー」「マザースポンジ」
と呼ばれているのですが、粉末のものと誤解のない様に、ここでは生種を「パネトーネ酵母」と呼びます。

 種継ぎをしていく過程で、周辺に浮遊している酵母菌(サッカロミセス エクスキューズ)や乳酸菌(ラクトバ
 チルス サンフランシスコ、ラクトバチルス ブレビス、ラクトバチルス プランタラム)などがバランスよく種の中に
 入り込み、濃縮され、美食の国イタリアの伝統的パン「パネトーネ」用の酵母として使われて、その
 味を長く愛され続けてきました。

 通常、乳酸菌は酵母菌と多少なりとも反発しあうものですが、パネトーネ酵母に含まれる乳酸菌は
 酵母菌と共生し、相乗効果を発揮して、他の酵母にはない独特の旨みを作り上げています。

 自家製酵母はオンリーワンを読んだ方には理解して頂きやすいと思うのですが、パネトーネ
 酵母は、アルプスの麓コモ湖周辺(及びほぼ同じ環境の場所)以外では、作られる事も酵母種とし
 て長い間引き継がれる事もありませんでした。
 同じような酵母を作るには同じ菌が浮遊している環境でないと作る事ができず、パネトーネ酵母に
 含まれる菌が浮遊していない環境で長期間種継ぎを繰り返していくと、だんだんと元の酵母の特
 性が失われていってしまうからです。

 製造元のPANEXでは3カ月おきにイタリアからパネトーネ種を取り寄せて、本場の味を損なわない
 様にしています。

5.「パネトーネマザー粉末(製パン用」とは

 パネトーネ酵母を国産小麦農林61号を使って培養し、粉末化して、ドライイーストを加えたものが、
 こちらのHPでレシピを紹介している白いラベルの「パネトーネマザー粉末(製パン用」(発売元:
 酵母工業 製造元:PANEX)です。(商品のパッケージはトップページをご確認ください。)

 「乾燥して粉にするなんて、誰がやっても出来るんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
 でも、酵母を粉末にする場合、「どう粉末にするか。」はとても重要なのです。

 パネトーネ酵母は天然酵母ですから、様々な菌や発酵生成物等が含まれています。それぞれに
 性質が違いますから、高温に弱いものや低温に弱いものがあります。
 「どの酵素を生かすか・どの菌を生かすか。」により、「どの位の温度で乾燥させて、どうやって粉末
 にするか。」が変わってくるのです。
 つまり、「乾燥・粉末」の方法によっては、同じパネトーネ酵母を粉末にしたものでも、まったく違う
 製品が出来上がる場合があるという事です。

 製造元のPANEXでは、長年酵母に携わってきた豊富な知識と経験を生かし、「パンを美味しくする
 酵素や発酵生成物」をできるだけ損なわないようにして、パネトーネ酵母を粉末化しています。

 「パネトーネ酵母のパンを美味しくする成分を、最大限に生かした粉末」にドライイーストを約20%添
 加し、天然酵母の良い部分とドライイーストの良い部分を組み合わせて、天然酵母の深い味わいを
 手軽に再現できるようにしたもの…それが「パネトーネマザー粉末(製パン用)」です。

 「パネトーネマザー粉末(製パン用)」を使ってパンを焼くという事、…それは「本来、アルプスの麓の
 コモ湖周辺でしか作りだすことの出来ない味わいを、手軽に再現できる。」という事なのです。

 「パネトーネマザー粉末(製パン用)」には、酒種のパンにしっかりしたお酒の風味がある様な「強い
 個性」はありませんが、「マザーのパン(お母さんのパン)」とでも言う様な、まろやかでやさしい味と
 香りの、口解けの良いパンが焼きあがります。

6.取り扱い上の注意点

 「パネトーネマザー粉末(製パン用)」にはドライイーストが含まれていますが、約80%は「パネトー
 ネ酵母」を粉末にしたものです。そして、パネトーネ酵母粉末は材料に対する影響力が強いので、
 ドライイーストや他の酵母とは違った特徴があります。

 大きな特徴の一つは「グルテンの結合をよくする。」という事。グルテンの結合をよくする事でパンが
 ふっくらとふくらみ、ドライイーストのレシピに比べて3〜5%程度吸水が増えます。
 また、「材料の味を引き出す。(変化させる)」という性質があるので、組み合わせる材料によっては、
 材料の風味を消してしまったりする場合もあります。

 私が作成したレシピの中には、ドライイーストとほとんど変わらない手順のレシピ(ストレート法と呼
 んでいます。)もありますが、ドライイーストや他の酵母のパンとはまったく違う手順や配合の作り方
 も出てきます。それらのレシピは、「パネトーネマザー粉末(製パン用)」の特徴を生かしてパンを作
 るために独自に考え出したものです。

 ドライイーストや生イーストのレシピをアレンジしてパンを焼いている方もいらっしゃるのですが、
 材料の組み合わせや作り方によっては思わぬ失敗をする場合があります。

 初めて焼く方は自己流でアレンジをせずに、こちらで提供している「パネトーネマザー粉末(製パン
 用)」のために作ったレシピをご利用ください。

 うまく焼けない場合、自分で原因を判断してしまわずに、遠慮なくご質問いただくようお願いいたし
 ます。
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★補足★「パネトーネマザー粉末(製パン用)」の原材料は、「小麦粉・パネトーネ元種(小麦粉)・酵母・乳化剤(パーム油
由来)」…となっています。「乳化剤(パーム油由来)」は、添加しているドライイーストにもともと含まれているもので、
パネトーネ酵母を培養粉末化する際に新たに添加しているものではありません。添加しているドライイーストに含まれる
乳化剤「ソルビタン脂肪酸エステル」は、マーガリンなどにも使われている、パーム油由来の安全性の高いものです。
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※上記の文章は製造元PANEX社長及び製造担当者から伺った話などを中心に、わかりやすいように
 まとめたものです。表現に誤りがないかどうか製造担当者にチェックして頂いています。

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