国産小麦を使う前に(国産小麦の予備知識)

 一般的に「国産小麦のパンは難しい。」といわれています。何年か国産小麦を使ってらっ
 しゃる方はよくご存知の事だと思いますが、何が難しいのか簡単にお話しておきます。

 1.「グルテンが少ない。グルテンが弱い。」から難しい。
 国産小麦は輸入強力粉に比べてグルテンの量が少なく、グルテンそのものも「弱い」傾向にあり
 ます。ふっくらとしたボリュームのあるパンを作るには、しっかりしたグルテン膜が必要です。
 グルテンが少なく弱い傾向にある国産小麦でパンを作ると、輸入小麦に比べて膨らみも少なく、
 重いパンになります。また、グルテンが弱いため、生地を優しく扱わないと作業中に生地を傷め
 てしまうという事もあります。

 2.「粉によって違う。」から難しい。
 同じ「国産強力粉」と言っても全ての粉が同じに扱えるわけではありません。同じ「国産強力粉」
 という表示であっても、粉によっては加水量が10%前後違う場合があります。(もちろん、生地の
 様子も膨らみ方も違います。)
 加水量を間違えれば、生地がべチャべチャになってパンを作る事ができなくなったり、生地が硬く
 なって捏ねにくかったり、なかなか膨らまなかったりします。
 また、膨らむ割合がわからないまま1斤型等のパンを焼くと、発酵の見極めがわからず、過発酵
 にしてしまう可能性も出てきます。
 多くの場合、国産強力粉は輸入強力粉とまったく同じレシピではうまく作る事ができないので、
 使う粉によって、それぞれ自分で生地の量や水分量を調節し、レシピを作らなければなりません。
 違いは可水量だけではなく、粉によっては「油脂が多いレシピだとふくらみが悪くなる。」「ガス抜
 きがしにくい。」「薄力粉をブレンドすると極端にふくらみが悪くなる。」…等、その粉独自の特徴
 が出る場合もあります。
 いつも生地を手でさわっていて生地の状態をわかっている方や材料の事を理解している方なら、
 何回か試作を行ってレシピを調節すれば使いこなせるようになる思いますが、「HBだけでしか
 焼いた事がない。」等、生地をさわりなれていない方や、副材料の生地に対する影響を知らない
 方が自分で生地の量や水分を調節することは、非常に難しいと思います。

 3.「品質が毎年変わる。」から難しい。
 「粉の違い」に加え、他にも国産小麦でのパン作りを難しくしていることがあります。
 「国産小麦は、小麦が育った気候(収穫地や収穫年度)によっても若干品質が変わる場合があ
 る。」という事です。お米や果物が気候や天候の影響を受け、「今年は出来が良い。」「今年は
 甘い。」という風に、毎年出来が違うのと同じです。
 例えば、2005年の2月に購入した「春よ恋(増田製粉)」は、タンパク量が9.8%だったのですが、
 2006年1月に購入した「春よ恋(増田製粉)」はタンパク量がなんと11.3%!1.5%もタンパク量が
 変わると、食感も変わってきます。

 気候・天候の影響で粉の性質が変わってしまい、「イーストで作るとうまく焼けるが、『パネトーネ
 マザー粉末(製パン用)』で焼くと膨らまない。」と言うケースも、過去にはありました。

 初心者の方の中には、「同じ強力粉と言う表示なのだから、国産でも輸入でも変わりがない。」
 と考える方もいらっしゃるようなのですが、輸入強力粉との違いがかなり大きい場合もあるので、
 あらかじめご了承ください。


 では、(特に国産小麦に慣れていない方が)国産小麦で焼きたい場合にはどうしたらよいのか。
 ここで、いくつかのポイントを紹介しておきます。

 A.「ホームベーカリーを過信しない。」
 ホームベーカリーは、もともと輸入強力粉でパンを作ることを前提に作られています。
 国産のパン用小麦粉は輸入強力粉とは性質が異なるため、粉によっては羽を回すだけのガス
 抜きではうまくガスが抜けずに、パンの中に穴がたくさん出来たりする場合もあります。
 国産小麦全般が「絶対にホームベーカリーでは焼けない。」という事ではないのですが、「国産
 小麦の場合、手作りで丁寧に扱った方が良いパンができる事が多い。」と思ってください。
 (捏ねについては、ホームベーカリーがあると便利ですが。)

 ホームベーカリーは「道具」ですから、工夫次第でいろいろな使い方が出来るものですが、万能
 ではありません。
 あくまでも「機械」なので、使う小麦粉の性質にあわせてガス抜きの方法を変えたりとか、粉に
 よって捏ねの強さを変えたりプログラムを変えたりといった事はしてくれません。

 国産強力粉の場合、収穫年度によってホームベーカリーで焼きやすい粉がある場合もあります
 が、ホームベーカリーでうまく焼けないからと言って、粉に問題がある訳ではありません。
 むしろ「HBに向いている粉ではない。」「粉に合った作り方ではないい。」という可能性が大きい
 です。
 ホームベーカリーは「どんな特徴の粉でも美味しいパンにしてくれる。」という様な「魔法の機械」
 ではないことをご理解ください。
 機械にまかせっきりにするのではなく、「必要な手間は惜しまない。」ことが、国産小麦のパンを
 美味しく焼くための秘訣だと思います。
 
 B.「詳しく書いてあるレシピを参考にする。」
 現在、いろいろな方が個人ブログやホームページでオリジナルレシピを紹介されています。
 国産強力粉を使ったレシピもたくさんあると思います。
 その中には「国産強力粉」というような書き方で、粉の種類を記載していないレシピもあります。
 前述の通り、国産強力粉は粉の種類によって加水量や膨らみ方がかなり違ってくる場合がある
 ので、レシピを作った方が使ったものとは違う粉を使った場合、失敗する可能性が高くなります。

 ホームページやブログなどの国産強力粉のレシピを参考にする際は、以下のポイントを押さえて
 選んでいただくとよいでしょう。

 @「試作に使った小麦粉の銘柄がはっきり記載されているか。」

 A「材料の分量が明確に表示されているか。」
  「○g〜△g程度」や「各自で適宜調整」といった、実際に試作した正確な分量の記載がない
  レシピは、結局は自分で調節しなければならなくなるので、国産小麦に慣れていない方は使用
  しない方が無難です。

 B「レシピが何年も前のものではないか。(最近販売された粉を使って試作しているか。)」
  国産強力粉は収穫年度によって性質が変わる事があるので、「昨年HBで美味しく焼けた粉」
  が「今年もHBで美味しく焼ける」とは限りません。(もちろん、その逆の事も起きる場合があり
  ます。)
  そのため、1年以上前のレシピを参考にしても、同じ仕上がりにはならない可能性があります。

 C「レシピと共に、作ったパンの写真が掲載されているか。」
  パンのレシピで写真がついてないものはほとんど見かけませんが、「実際に作ったのか。どん
  なパンができたのか。」を写真で確認できないレシピは、使用しない方が無難です。

 国産小麦に慣れていない方は、国産小麦に慣れている方が作った詳しい記載をされているレシ
 ピを参考にして、できるだけ元のレシピに忠実に作っていただく方が、失敗が少ないと思います。
 また、「国産小麦を使ったパンのレシピを紹介している。」という方は、レシピを見る方・利用する
 方のためにも、粉の銘柄や購入時期・材料の正確な分量・作り方の記載を明確に行って頂くよう
 お願いいたします。

 C.「(国産小麦に)無理な要求をしない。」
 例えば、国産小麦でイギリスパンのような非常に伸びの良い軽いパンを焼こうと思っても、焼く
 事はできません。
 イギリスパンは「最強力粉」と呼ばれる「最もよくふくらむ粉」を使っているからふくらんでいるので、
 もともと輸入小麦よりふくらみの少ない傾向にある国産小麦を使うのであれば、作り方をどんな
 に工夫しても最強力粉と同じようにふくらませる事は出来ません。
 それぞれの国産小麦の性質を理解し、食パンが美味しくできる粉なら食パンを、田舎風の重い
 パンが美味しく焼ける粉ならずっしり重いパンを…と言う風に使い分けて、それぞれの粉の魅力
 を生かす作り方でパンを作りましょう。

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